コロナ明け初の海外旅行はメキシコへ。
3泊6日の2日目です。
バスで冒険
R03バスの謎
朝、アバストス市場へ。
なんだか街の様子が昨日とは少し違っていて、祭りは終わって、平日なんだなあという感じ。
アバストス市場へはお買い物が目的ではなく、サンアントニオ・アラソラ村へ行くためです。
さまざまさな情報によると、ここから乗り合いタクシーに乗って行くのが一般的みたい。
だけどこのとき私は、アラソラ行きの乗り合いタクシーを見つけることはできなかったです。
じゃあバス?
普通に日本でやるように Google mapで検索すると、Oaxaca-zaachila (道路の名前?)を通って、アラソラ村に向かって上がっていく交差点に停まる路線が分刻みで出てきます。
その中から乗り換えなしで行けるバスに乗ろうと、そのバス停に行って待つと、なんとGoogle mapが言ってる時間ぴったりにそのR03バスがやってきました。バスがここまで時間に正確なのって、日本でも珍しくない?
念のため「サンアントニオアラソラに行きたいのですが」と運転手さんに尋ねると、「9ペソ」との返答だったので、乗る。なんと順調。
街を出るとトウモロコシやサボテンの生える田舎道になって、ときどき道路脇で人々が手を挙げてバスを停めて乗ります。降りる時も運転手さんに「そこのサボテン群のとこで」みたいな感じで申告して、希望の場所で降りることができます。
このシステム、海外ではよくあるけど、日本でも田舎のほうではやってたりするのかな?
自分が降りる場所をGPSで確認しながら、私もいいタイミングで停めてもらえたらいいんやけど……(自信ない)
ところが、なぜかこんなことに。
なんで?
運転手さんに、いまの私の窮状を伝えたい!けど、こんなときに限って電波が弱く翻訳アプリが使えない。というか、これを簡潔な日本語でなんと言い表せばいいのかもわからない。機械翻訳で良い結果を得るには、明確な日本語の入力が基本なのに……。
ようやく「アラソラ村に行くにはどこで降りれば良いのですか?」の翻訳ができて、停車したタイミングで運転手さんに見せると、運転手さんはちょっと舌打ちする感じで(そりゃそうだ、そもそも路線が違う?んだから)、「とりあえずそのまま乗っとけ」的な身振り。結局、終点のZaachila(サアチラ)まで行ってしまいました。
バスが2台止まっていて、民族衣装を着た人たちがベンチに座って出発を待ってる小さなバスターミナル。
で、どうすれば?とバスを降りようとすると、運転手さんがまたもや「そのまま乗っとけ」な身振り。
いま思えば、ついでにサアチラでゆっくりすれば良かったかもしれないけど*1、ドキドキしながら次の展開を待っていると、その運転手さんが再び運転席に乗り込んできて、フロントガラスに置いてあるプレート「Zaachila」を裏返して「Centro」に変更し、折り返し出発しました。
しかし私は結局どこで降りればよいのか?
アラソラ村の(できるだけ)最寄駅かつアラソラ村への次の足が見つかるような地点とは?
運転手さん、降りるべきときが来たら何か言ってくれるのかな?
と手に汗握りながらGPSを見張っていると、
復路は本来の予定のOaxaca-zaachila (という道路?)を通ってるし!なんで?
というわけで、なぜか復路は難なく予定通りの交差点のあたりで降りることができました。*2
サンアントニオ・アラソラ San Antonio Arrazola
ここから、まずはオアハカ木彫りアレブリヘス(Alebrijes)の創始者、マヌエル・ヒメネスさんの博物館(Casa Museo Manuel Jiménez)を目指します。
当初、乗合タクシーのシステムがよくわかってなくて、運転手がスピードを落として声をかけてくるのにどう対処していいかわからなかったのだけど、勇気を出して Google map を見せてみると、次々と断られる(笑)。断られる理由がわからないのがなんとも……
しかしある運転手さんが「知らない……」という反応を見せたとき、後部座席に乗っていた赤ちゃんを抱いた女性が「あ、知ってる。これ私の目的地のすぐ近くだわ」と言い、それならと助手席に乗せてくれた。(以上、すべて私の推測)
そんなわけで、無事、目的地に到着。
ミュージアムで作品の数々と、マヌエル・ヒメネスさんを紹介するドキュメンタリー映像(英語字幕付き)を見る。
横の部屋ではワークショップをやっていて、可能なら私も参加したかったです。
ここで一体のコヨーテと目が合って、とても気に入ったんだけど、ちょっとクールダウンするために、村を歩いてみることに。
壁画のなかを歩き回る。
アレブリヘスを売るお店もたくさん並んでて、色々見たけど、あのコヨーテよりもグッとくるのは無いかな……
なんて考えながら歩いていて、ふと、この壁、なんか見たことある、、
そうだ、春に見たみんぱくゼミナール「民衆芸術ー ラテンアメリカの人びとの創造力と批判力」のフライヤーに載ってた画像だ!
ここでなんだかとても不思議な気持ちに。
あのとき私は、4年ぶりの海外で感覚が鈍ってるだろうに、なんでよりによってハードルの高そうなメキシコへ……ま、メキシコシティでおしゃれカフェに行ったりお買い物とかできたらいいか〜くらいに考えていて*3、ちょっとした予習のつもりでみんぱくに行って初めて、えええええ、メキシコってこんな素敵なアートがひしめくところなの?と本当に驚いたのでした。
そしてこのストリートアートの画像を見たとき、行ってみたいという気持ちよりも、文化人類学者の方がフィールドワークに行くようなところであって、素人の私に行けるところではないという印象を強く持ちながらも*4、「サンアントニオアラソラ村」と手帳にメモっていたのです。
そしていま、私はまさにその壁の前に立っている。
コロナ禍で旅行することができなかったとき、観光業の方々の苦肉の策としてリモート旅行が行われたりしました。
さらにはVRも話題になって、このまま旅行は廃れるのでは?という風潮すらありました。
遠い異国のプロダクトを現地の工房から直接購入するのだって、いまや簡単な話。
私がここに来ることができたのも、事前にwebで得た情報や、Google map、Google翻訳のおかげ。
だけど、サアチラのバスターミナルでの心細さや頼もしい運転手さん、機織り機の前で染料の説明をしてくれてるのにわからないもどかしさ、暑いけど乾燥、とうもろこしとモーレの匂いは、現実に足を運んだ私だけが手に入れられた偶然。
DXにより、これまで行くのが難しかったところに簡単に行けることはあれど、ツーリズムが廃れることは絶対ないって確信しました。
セントロ再び
コヨーテを購入し、セントロへ戻ります。
乗り合いタクシーを降りたあたりにバスが停まっていて、まさに発車するところだったので、とりあえず乗る。一本道なので、どう考えても乗り合いタクシーに乗ったあたりのバス停には停まるだろうし。
予想通りの場所で降りて、しばらく待っているとやって来たCentro行きのバスに乗る。
どこらへんで降りようかな?と考えていると、泊まっているホテルの前にバス停があって、そこに停まったのでびっくり。もうチェックアウトして荷物を預かってもらってるだけだけど。
とりあえずチョコレートドリンクで休憩。
テキスタイル博物館
セントロの地図を見ていて見つけた「Museo Textil de Oaxaca」が気になるので行ってみることに。
オアハカには多種多様な民芸品がありますが、織物も豊富です。
博物館の観覧は無料で、入り口のロッカーに荷物を預けて、受付のノートに国、名前、入館時間を記入します。
オアハカ州各地の、19世紀後半から21世紀の日常着や儀式用の衣服が多数展示されていました。(常設展?)
これが非常に洗練されていて、民族衣装、民芸品の一般的なイメージとは異なったものも多く、とても見応えがありました。
さらに建物も素敵でした。この博物館は本当におすすめです。
またこの周辺には、生地屋さんや手芸店も多くて、散策も楽しかったです。
モーレ Mole
遅いランチはオアハカ名物モーレ料理。
美味しい/美味しくないではなく、「複雑な味」という表現がぴったりだなと思いました。
あと、日本のECサイトのメキシコ雑貨についての口コミで、臭いのことを書いてる人が多いなぁと思ったことがあって、「甘いような、決して悪臭ではないが、よくわからないニオイ」らしいんだけど、このモーレの匂いでは?と思いました。
左側のチェックの生地の中には、もちろん焼きたてトルティーヤが入ってます。
後でモーレについて検索したら、ここが一番わかりやすかったです。さすがですね。
サントドミンゴ教会の結婚式 Iglesia de Santo Domingo
ハラトラコ地区あたりを散策した後、サントドミンゴ教会の前を通りかかったとき、花嫁さんの車に遭遇。
ここでもやっぱり楽団付き。いつもどこでも音楽があるね。
夜、ホテルに戻る際にソカロを通りかかると、またもやパレード的な盛り上がり。
死者の日まだまだ続行中?
オアハカ2日間を目一杯楽しんで、メキシコシティに向かいます。
バスで冒険再び
メキシコは長距離バスが発達しているそうです。鉄道が無いから。
メキシコシティ→オアハカの移動は、時間の節約のために深夜の長距離バスを選択しました。
この夜行バスについてはすでに多くの方が書かれていますが、どこでも読んだことが無かった体験がありました。
ADOのチケット
渡航の2ヶ月くらい前に、多くの方と同じようにADO(アデオ)をwebで購入しようとしたところ、ADOの公式サイトが一向につながりませんでした。
日本からはアクセスできない説もあるようなのですが、開くときもあるのが曲者。普通につながって時刻表を調べて、後日購入しようとしたらつながらない、みたいな。時間帯の問題?
仕方ないのでチケットサイトで購入。なんか怖いのでPayPal で。
けど本当に怖いのは、チケットを買ったつもりが取れてなかった場合ですよね。私の旅程では、帰国便に乗れなくなる可能性が高い……
とりあえず、こちらで購入して問題なかったです。
22:30発 ADO premium 1,196ペソ
一等バスターミナル Central De Autobuses
バスターミナルに着くと、めちゃごった返してて、やっぱりみんなバス移動なんだ。
そしてここで初めて気がついたのですが、バスには便名がありません。出発時刻と行き先のみ。
けどメキシコシティ行きは、同時刻に数本が30分毎にあったりして、私が乗るバスはどれ……? おまけにここでも、係員が地声でアナウンスしてるだけのような……
心配になって係員にチケットを見せると、「ここじゃない」
別の係員が案内してくれるらしく、ついて行くと、premium用の待合室でした。
外国人旅行者が多く、日本人も数組いました。
深夜の緊張
バスに乗車する際、パスポートの提示などはありません。
premiumは座席ゆったり快適で、これなら眠れそう。*5
出発して30分くらいで高速道路へ。けど意外とスピードが遅いですね。
渡航前に、外務省の海外安全ホームページで、メキシコでのバス移動についての注意喚起や事例を見て、怖いな……とは思ってました。有料道路を通ることが推奨されてますが、窓の外を見ると、日本の高速道路なんかとはまったく別物の、何もない真っ暗な荒野の中の一本道って感じで、さらにこの速度では、襲撃するのは容易いことかも……みたいな。
うとうとしはじめた頃、なにかで目が覚めて、気がつくとバスが停車していました。そして運転席と客席を隔てるドアが開いて、男がひとり乗り込んできました。
こ れ は 事 件 !?
咄嗟にGPSを見ると、場所はTehuacán。
まず最前列の日本人女性と話していて、とりあえず強盗ではなさそう……?と思っていると、一人一人の顔をライトで照らしながら通路を歩いてきました。
そして私の斜め前の席の中国人カップルに「パスポート」と言い、彼が出すのに手間取っている間に、また通路を進んできました。
私を含めて最後尾まではスルー。
中国人のところに戻ってきて、パスポートを、顔写真のページだけでなく、本当に全ページをライトを当てて仔細に見て、またビザと入国スタンプのページに戻って……と、「穴の開くほど」とはこのことか!と思うくらい見ていました。
係員は迷彩服で、防弾チョッキを着ていました。
窓の外を見ると、バスは大勢の人に囲まれていて、警察官もいました。荷物室も開けているようでした。
しばらくして、バスは発車。それ以降も、到着まで検問所が数箇所あって、その度に徐行しましたが、停められることはなかったです。
抜き打ちで検査しているのか、道中、一度は検査があるのか?
まとめると、
- 途中、検問がある
- アジア人はパスポート提示を求められる
- 日本パスポートなら簡単に終わる
- 日本以外なら不愉快な思いをするかも
といったところかと思います。*6
やはりメキシコの治安は、日本や、これまで行ったどこの国とも次元が違うのかと初めて実感した反面、アジア人だけ調べるとは、何を警戒してのことなのか?という疑問も残りました。
しかし以前、北アフリカ某国で、専属ドライバーさんの車で長距離移動した際、あちこちの交差点でパトカーに止められ、その度にドライバーさんが警官にお金を渡しているのを見てしまったことがありました。ドライバーさんいわく「外国人を載せていると目をつけられやすい」とのこと。それに比べたらメキシコはよっぽどまともというか普通だな、とは思いました。
その後、決してぐっすりとは眠れなかったけど、無事メキシコシティに到着しました。